敷金を返してもらうのを諦めないで!|民法改正

query_builder 2021/07/22
ブログ
アパート

おはようございます。

文京区の税理士、あがつま税理士事務所の上妻です。


突然ですが、

賃貸物件の退去時に「思ったより敷金が返ってこなかった!」とガッカリした経験はありませんか?


民法の改正により

賃貸借に関する改正がありました。


新法において

借主は、「賃貸物件の通常の使用によって生じた経年劣化については原状回復義務を負わない」ことが

明文化されました!


どういうことか、これから解説しますね。


賃貸物件にお住まいの方は必見です!

私は1年位前に引越したばかりなので、もうちょっと前に知りたかったです。。

ガッカリ顔文字

賃貸アパートやマンションを借りるとき

敷金・礼金を支払う場合がほとんどだと思います。


敷金とは

契約中に貸主が借主から預かるお金で

賃料の不払いの補てんや退去時の修繕負担義務(注)に使われます。

(注)入居中の不注意又は故意で発生した汚損、毀損(傷や汚れ)などを修繕する義務

貸主からすると、見ず知らずの人に物を貸すわけですから

「何かあったとき用に預かっておくお金」は大事でしょう。


礼金とは

昔住宅が不足していた時代に、借主がお部屋を貸してくれた大家さんに対してお礼の気持ちを込めてお金を渡したそうで

その「借主が貸主にお金を渡す」という慣習だけが残っているんだそうです。(なくなればいいのに)


礼金は、払ったらもう戻ってこないけれど

敷金は、預けたお金なので退去時に戻ってきます。


でも実際は、なんやかんやと原状回復の費用に充てられて、ほんの少ししか戻ってこなくてガッカリした・・・

という経験がある方は多いと思います。


全国で数多く、このようなトラブルが発生し

敷金返金に関して訴訟が起こされました。

大家さんとトラブル

敷金の取扱いについて

なぜ、こうしたトラブルが相次いだのか。


旧民法では

「借主は借用物を原状に復してこれに付属させたものを収去することができる

という、使用貸借(賃貸借以外)の規定を準用していました。


この準用規定は

賃貸借の終了時に賃借人が賃貸人に対して原状回復義務を負うことも定めているもの

一般的に理解されていました。


しかし、当規定は借主の権利を定めたものであり

逆に言えば「借主は、退去時に撤去して元どおりに戻すなら(エアコンなどの)私物を設置してもいいよ」と言っています。

要するに、この準用規定において

賃借人が原状回復義務を負うことは明確になっていません

裁判所イラスト

平成17年最高裁判所は

以下の見解を示しました。


1.賃借物件の損耗の発生は、賃貸借という契約の本質上当然に予定されているものである。


2.借主が通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少に関する投下資本の回収は

通常、貸主側で、減価償却費賃料の中に含ませた修繕費等の受け取りにより行われている。

(通常損耗によるマイナスの取り戻しは、貸主側で完了する)


3.建物の借主に通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは

借主に予期しない特別の負担を課すことになるから

少なくとも、「借主が負担することになる通常損耗の範囲」が賃貸借契約書に具体的に明記されていること等が必要である。


そして、以上の見解をもとに

「賃借人は通常損耗の原状回復義務を負わない」

という決断を示しました。


緞帳

こうした最高裁の判断も踏まえ

新法では以下のように明文化されました!


1.賃貸借が終了したときは、賃借人は賃借物を受取った後にこれに生じた損傷について原状回復義務を負うが、

通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗や賃借物の経年変化については原状回復義務を負わない。

(新法第621条本文)


2.収去義務については、賃借人が賃借物を受取った後に賃借物に付属させたものについて、賃貸借が終了したときには、賃借人が収去義務を負う。

(新法第622条において準用する新法第599条第1項本文)

ゴレンジャイ

いかがでしたか。


借主の不注意や故意に傷つけたり汚したものについては、退去時に原状回復義務が生じますが

普通に暮らしていて経年劣化したものの原状回復については

既に、その修繕費も含めて借主が家賃に含めてお支払いしているのです。


賃貸物件の退去時の立会いで

業者「壁紙とフローリングの張替え等の原状回復費用を引いた敷金の返還をいたします。」

と言われたら

借主「通常損耗についての原状回復費用は家賃に含まれているはずなので、全額の返還をお願いします!」

と言ってみましょう!

(クリーニング代と鍵交換の費用くらいはかかるかな。)


退去時のみでなく、契約時の確認もとても重要だということも分かりました。

賃貸借契約書に、「賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲」の記載があれば

その範囲内の損耗に関しては、負担は避けられないでしょう。


ただ、旧民法においても新法の定めにおいても

賃貸借に関して、借主を守るための法律である印象を私は受けました。

弱い人を守る、といった感じでしょうか。


生きていくには知恵が必要ですね~

皆さまの生活の参考になれば嬉しいです。

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